本記事では、NPOにおけるコミュニケーションのノウハウとサイボウズLiveの活用方法をお伝えします。
※特定非営利活動法人 NPOコミュニケーション支援機構(a-con)様によるNPO向けフリーマガジン「npo-co」2012年4・5月号の転載記事です。
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「NPOのメンバーがなかなか増えない、定着しない。」「ボランティアで何度か手伝ってくれたあの人、最近連絡がない……」
“お金” ではなく “想い” で集まったボランティアたちと一緒にプロジェクトを進めるには「どうやって彼らとの絆を深めて、プロジェクトをスムーズに進めていくか?」という『インナーコミュニケーション』の視点がとても大切になります。
今回の特集では、ボランティアを中心としたプロジェクトを数多く行ってきた、本誌の発行元でもある『a-con』で培ったノウハウや事例を中心に、最新のWebツールの活用したNPOにおける「インナーコミュニケーション術」を解説していきます!
ボランティアとの良い関係、築けていますか?
a-conでNPOのコミュニケーションサポートの活動をしていると、NPOの担当者から「ボランティアをうまく集めたい!」「集まってくれたボランティアが、なかなか定着してくれない!」といった相談を受けることがよくあります。
限られたリソースで、大きなミッションの達成を目指しているNPOにとって、団体の理念や活動に共感をしてくれたボランティアの力を借りることは、活動を支える強力なエンジンとなります。
ボランティア 1人1人のスキルを生かし、持っている能力を最大限に発揮してもらうためには、彼らを適切にマネジメントするための『インナーコミュニケーション』の視点が必要不可欠です。しかし、営利団体である企業ですら、社内のコミュニケーションには大変に気を使うものです。”想い”や “やりがい” という、目に見えない報酬で集まったボランティアの力を借りて活動を進めなくてはならないNPOには、もっと大変な課題がたくさんあります。
そこで本特集では、ボランティアの力を120%発揮してもらうためのノウハウである『インナーコミュニケーション術』について、a-conの活動を通じて経験した事例を交えながらご紹介していきます。
【インナーとは?】
NPOにはさまざまな「インナー」が存在します。正会員や事務局職員はもちろん、ボランティア、賛助会員、寄付者、協力団体など。NPOのタイプや抱える課題によって、NPOを取り巻くさまざまな立場の人が「インナー」になるのです。「インナーコミュニケーション」を考える時はまず、誰が「インナー」なのか?を整理するところから始めましょう。
ボランティアとのインナーコミュニケーションとは?
まず、インナーコミュニケーションがカバーする領域について、「npo-co 2・3月号」(リンク先はPDF)で特集した、ボランティアとのコミュニケーションフレームワークである『ASCESチェックポイント』から考えていきます。
■ASCESチェックポイントを理解しよう!
「ASCESチェックポイント」は、人がボランティア活動を始めるにあたって、どのように気持ちが変化するのかを5つの「きっかけ」で整理したものです。
5ステップのうち、Attention(知る)とSympathy(共感する)はいわゆる『広報』の領域で、団体の活動や理念を知ってもらい、興味や共感を持っていただくための情報発信やボランティアの募集を行うフェーズです。
今回、『インナーコミュニケーション術』として扱うのはContact(参加してみる)・Engagement(メンバーになる)の2ステップです。団体に共感してくれた人に、ボランティアとして活動に『参加』していただき、その後、数カ月から数年といった 中長期のスパンで、継続的に活動を行う『コアメンバー』になっていただくためのフェーズです。
■インナーコミュニケーションの4つのステップ
さらにインナーコミュニケーションを細かく見ていくと、右のようなステップに分けられます。
このようなステップを1つずつ体験してもらうことで、ボランティアと “ボランティア活動を通じた達成感”を共有することができます。そのことが、のちの活動やプロジェクトへ継続的に参加してもらうための、新たなモチベーションを生み出すことにつながるのです。
【ボランティアのモチベーションを理解しよう!】
a-conでは、NPO法人二枚目の名刺と共同で、「社会人のボランティア意識」に関する調査を実施しました。ボランティアは活動を通じて得たいこと、達成したいことを持っています。ボランティアと良好な関係を築くためには、彼らの気持ちを理解し、活動のモチベーションが続くように配慮することが重要です。
調査結果はa-conのWebサイト『「社会人ボランティア意識」調査結果』からご覧いただけますので、ぜひチェックしてください!
ボランティアとNPOの「3つ」のかかわり方
「ボランティア活動」と一口に言っても、その活動内容はさまざまです。そして、その内容によって、ボランティアの参加や継続のしやすさ、やりがいを感じるポイントなども異なります。
一般的に、NPOにおけるボランティア活動は大きく『スポット型』『オフィスワーク型』『プロジェクト型』の3つのタイプに分類できます。
下表で、それぞれの活動の特徴と、インナーコミュニケーション上、留意すべきポイントをご紹介していきます。あなたの団体にかかわるボランティアのタイプを明確にした上で、適切なコミュニケーションを行うことが、NPOがボランティアとの良好な関係を築くことにつながります。
1.スポット型
「ゴミ拾い」や「イベント運営の手伝い」など、ボランティアが決められた日時に単発で参加するタイプが『スポット型』のボランティアです。『スポット型』は参加回数が1回~数回、日時もピンポイントで決まっていることが多いため、ボランティアに慣れていない「興味層」が参加しやすいことが特徴です。一方、単発の活動のため、1度参加してくれた人が継続的なボランティアメンバーとして定着しにくい傾向があります。
【インナーコミュニケーション上のポイント】
ボランティア活動を始める動機の1つに「新しい人とのつながり・交流」があります。スポット型では、ボランティア同士の間で活発なコミュニケーションが生まれるよう、配慮することが大切です。また、活動外の期間でも、TwitterやFacebookなどを活用し、ボランティアとつながることで、ボランティアが2度、3度繰り返して参加しやすい空気感をつくるのも効果的でしょう。
2.オフィスワーク型
事務作業やWebサイトの更新作業などのルーチンワークをサポートしてもらうのが『オフィスワーク型』ボランティアです。ボランティアの作業範囲が明確なため、彼らに作業の負荷がかかり過ぎないことが特徴です。ただしオフィスワーク型の活動は、ある程度の期間、1人のボランティアに作業を継続して行ってもらうケースが多いので、まず一度参加してもらうためのハードルが高くなる傾向があります。
【インナーコミュニケーション上のポイント】
「お試し参加」や友達同士での「グループ参加」をできるようにすることで、ボランティア参加のハードルをなるべく下げましょう。また、オフィスワーク型は、作業がルーチンワーク化して、ボランティア本人のモチベーションが下がってしまうことがあります。そのため、団体の活動理念をうまく伝えることで、お願いしている作業がどのような成果につながっているのか?をしっかり理解・納得していただくことが大切です。
3.プロジェクト型
「Webサイトのリニューアル」「イベントの開催」など、ゴールは決まっているけど、そこにたどりつくまでの道のりが決まっていないボランティア活動の形式が『プロジェクト型』の特徴です。社会人のボランティアに本業のスキルを発揮してもらうことで、自団体だけでは達成が難しい大きな成果を生み出すことも可能ですが、そのためにはボランティア1人1人の力を活かすためのマネジメントが必要となります。
【インナーコミュニケーション上のポイント】
活動時間の限られているボランティアと「プロジェクト」を進めるために、さまざまなポイントに留意することが必要です。重要なのは、プロジェクトの進行管理を行う「プロジェクトマネージャー」が、ボランティア1人1人にどのような活動をしてもらうか?という役割分担をすることです。次ページ以降で、このプロジェクト型のボランティアを進めるためのノウハウについて紹介していきます。
「仲良く楽しむ!」それも、インナーコミュニケーション
a-conでは、年に2回、カジュアルに参加できるイベントを開催しています。
普段とは異なる場所で、メンバー同士が親密な交流を持てますし、本業の都合で疎遠になってしまったボランティアが、再び団体にかかわるきっかけづくりとしても役立ちます。

a-conキャンプの様子。毎年8月に実施している。 ほかに、12月にはクリスマスパーティも実施。 気軽に参加できるため、新しいボランティアメンバーが団体の雰囲気を知るきっかけにもなっている。
【ソーシャルメディアでボランティアと仲良くなろう!】
Twitter・Facebookなどのソーシャルメディアは、友達とのコミュニケーションや情報発信に利用されていますが、NPOスタッフなら「ゆるいつながり」作りに活用してみましょう!ソーシャルメディアは『 Weak Tie(弱いつながり)』と言われる、”そこまで関係が深くない知人”や”疎遠になってしまった知人”との関係を深めるために有効だと言われています。「団体の活動に興味を持ってもらったけど、その後、本人となかなか交流する機会がない!」といったことはありませんか? そんな時、その人とソーシャルメディア上で友達になって”ゆるく”つながってみましょう。日々のつぶやきを通じて、彼らに団体の活動やあなた自身のパーソナリティに”親近感”を持ってもらえれば、これまでは1度限りで関係が途絶えてしまった人たちとも、継続した関係が築けるかもしれません。
この記事の続きは、(中編)ボランティアの力を最大限に活かすプロジェクト運営へ。